伯耆大山(積雪期)

避難小屋

 伯耆大山には六合目避難小屋という山小屋があり、そこまでが樹林帯でそれより上が左右を見渡せる急登の稜線となっています。

直登稜線

 この六合目避難小屋から山頂台地までの直登は、真っ白の積雪期だと見方によってはかなりの傾斜角を持つ危険な斜面に見えます。ここがもし標高3000mを越えていて、アイゼンの歯が10mm.しか刺さらないバーンになってます……なんて状況だったら、我々もそう気軽に踏み込めませんし、登山者は何十分の一にも減少すると思います。

 しかし幸いにもここはそれほど過酷な標高でもないので、(これは現地ガイドの方には絶対怒られますけど……)仮にアイゼンが無かったとしても、しっかりしたキックステップで、つま先を雪面の強い層まで20cmは放り込む事が可能なので、ある程度確実に上り下り出来るのです。

下山

 一般的な登山では、登ったらその後、下山しなくてはなりません。そして山の斜面というものは下から見上げるのと、上から眺めるのでは……これはかなり心理的に隔たりがあります。我々チームは人間二名、犬一頭のメンバーですから、全員無事にという事を考えると、「油断大敵」という言葉が頭を駆け巡る瞬間なのです。

 しかしまぁ、この程度で毎度毎度緊張していたら神経が持ちませんし、登山なんて止めて向こうに見える弓ヶ浜で散歩などしている方が賢明です。ですが下りは少々歩き方にコツがいるかも知れません。登りよりはるかに一歩一歩を確実に……という意識が必要です。まず踵キックステップで、つま先を絶対に下る方向に向ける事無く、確実に斜め上につま先が向く位の意識でそれをキープしながら踏み出します。踵を踏み込んだ最初は必ず雪の層と一緒に3~40センチは下方にズズズィーっとスリップしますが、必ず止まります。それが確実に止まるかその直前までもう一方の足を出してはいけません。ここでビビッて歩幅を極端に狭くして自重を全く利用なさらない方もいます。(雪山歩行技術において、ピンからキリまでのレベルの方が一同に会しているのが大山の夏山道です。)

ハットリ君

 我が家では夫婦二名の片方がワカン、片方がスノーシュー……という装備で樹林帯の深雪をトラバースします。これはそれぞれのギアに得手不得手があるというのが理由で、地形によってお互いをカバーしようと言う目論見です。ワカンを「ハットリ1号」、スノーシューを「ハットリ2号」と呼んで毎回使用技術に鍛錬を積んでいるのです。下の写真では愛犬サニーの四肢がほとんど埋まっているわりに、パートナーの両足首が全く沈んでいないことが良く分かりますね。これがハットリ君の価値です。もうどうせならスノボで滑っちゃえ、と考えるのがマジョリティーだと言うのは、我々も共感します。がしかし……我々がやりたいのは「旅」ですから、ここはその気持ちをぐっと抑えて、「上から下へ」のみに重きを置くアクティビティーには没頭できないのであります。

元谷

 そうしているうちにすっかり陽は傾き、大山の一日が終わりかけます。後は元谷の中を南光河原駐車場まで、地形が頭に入っている方なら自由に川を渡ったり渡らなかったりしながら、自分たちだけの道を突き進めば必ず下山できます。冬季の大山登山で一番至福ののひとときです。

(文/城代トシフミ)

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