普通の茶番劇

*T.J
 自営業者の私は2011年春ごろ、日本を文字通り揺るがした震災とはほとんど全く関係ない理由で明白な自己責任による経営苦境に喘いでいました。そして2012年秋、福岡市天神の商業施設で偶然お見かけした麻生元総理に、当時下野していた自民党の去就について僭越ながら話しかけ、「君が保守的な考えならまずは自分を信じなさい。日本を動かしているのは国民です。」というその当時の私にとっては最も深く有益な言葉を頂いたことで自己を肯定するチャンスを獲得しました。それをきっかけにこの10年間は順調に再建でき、また本業以外の経済活動参加への余裕も生まれて今日に至っていることは、とても私的で些細なエピソードです。

 政治家の暗殺という現代日本で発生した前史的事件に際して、その凶弾に倒れた政治家が自分の名を冠した上で全世界に知らしめた経済政策を、そのような文脈で全面的に支持している日本国民がいることを記しておきたくここに記述しています。

 安倍元首相暗殺から10日ほどは気分の整理がつかず、地上波TVとネットで繰り返されていると思しき茶番を遮断して遠ざかっていましたが、久方ぶりに見回してみますと、「自業自得」「因果応報」とはすぐには言い放てなかった「こんな人たち」が、密造銃で人を撃ち殺すようなケダモノが言い訳として吐いた言葉を恰好のネタとして死者をさらに糾弾するという、世にも下劣な光景が繰り返されていました。

 日本で生まれ育った私たちは、日本人が伝統的に持つ家族観や保守的な観念を当然ある程度は共有しあっていると思い込んでいましたが、それらを根拠に世間と話が出来る世界とは今既に違っていると感じます。同時に「美しい国、日本を取り戻す」という前総理の言葉の意味をさらに掘り下げて考えてしまう理由は、凶弾により死してなお今現在自分がよもや宗教との繋がりを糾弾されて貶められていようとは、とても想像していないだろうという事に他なりません。

 私はこれまでの30年間、いくつかの定位置に箱を構えてお客を待つという一般的な商業スタイルで美容業を営んできましたが、様々な擁護活動をする団体からの暴力的な寄付申請によって怖い思いをしたことは何度かあります。しかし宗教団体によって迷惑を被ったことなどは一度たりともありませから、その存在には常に寛容な態度を心がけています。霊感商法詐欺や暴力などの反社会行為は全く別次元の問題ですので、これは法治国家日本の司法におまかせするだけです。

 宗教問題を必要以上に規制することがとても危険だと思う理由は、チベットやウイグルで支配者側が行っている行為との違いを明瞭に説明できない事、またそもそも宗教団体という用語をどういった範疇でくくるのかも明確ではない事、そしてさらには哲学的にも宗教学的にもそれら専門家でさえその知見が一致しているわけではない事など、挙げれば切りのない程あいまいな行いの上にふわっと乗った状態で、確実に一定の国民の心のよりどころになってるというのが昨今の現実であるからです。

 宗教との繋がりを理由に政権が叩かれるような現象は理解に苦しみます。勧誘や献金によって被害を被った方々には申し訳ありませんが「自分をしっかり保って次から気を付けてください。」としか他にいう事はありません。特定の宗教を信心している全ての方から参政権をはぎ取るつもりですか?、と今のマスコミには言いたい。多分この私のような意見はまだまだ日本の賢明な沈黙マジョリティーだと信じていますから、テレビやインターネットがこの下劣な茶番劇を早く収め、元々の普通の茶番劇に戻ることを希望するばかりです。

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